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自分の心の火が揺らついているとそれを整え直すのに「他」の「火」にあたりにいきたくなるもの。民俗学では「旅」を「他火」と書くそうだ。そんな「他」の「火」にあたりながら考察する「夢多(ムダ)」の多い日誌。


by agtec
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教育ファーム事業取組取材その1(旭川市古屋農場)

 昨日に引き続いて、「教育ファーム推進事業」のお話。
 今日は、北海道でのモデル地区のひとつになっている旭川市の取組みについて、東京から農文協の取材担当者が来て、受け入れの工夫など受入を行なっている農家さんに取組みの取材を行なった。
 
子ども農業体験塾の活動内容
 旭川市では2団体が本事業のモデルになっており、「旭川市民農業大学運営委員会」と「旭川市子ども農業体験塾運営委員会」(いずれも旭川市農政部農政課が事務局)が活動を行なっている。この団体が発足した経緯については書くと長くなるので割愛させていただくが、とくに、「子ども農業体験塾」では、旭川市内の小学校5~6年生を対象に広報等で募集を行い、農業体験のできる場を提供。「いのち」や「食」について考える機会づくりを行なっており、今年で9年目を迎える。昨年までに約200名の学童が学んでいてリピーターも多い。定員は30名程度で、毎年ほぼ定員数の申込みがある。
 特徴的なのは、たいてい農業体験といえば、1つの農場で、30名だったら30名を1農家が一同に教える場合が多いが、ここでは、それぞれ経営の違う受入農家が6農場受入先となっており、子ども達を5~6名の班で6班にわけ、それぞれの担当となった農家さんのところで少人数で1年を通して体験活動を行なうのだ。活動日自体は、5月から月に1回、学校が休みの土・日のいずれかで行い11月頃までを1シーズンで行なっている。少人数で同じ農家さんの指導のもと作物を育てていくので、農家さんと子ども達とはたいへん密な関係がとれ、不思議や疑問の解決も迅速だったり、何よりみんなひとりひとりが、それぞれの役割を任せられ、真剣に取組むことが可能なのだ。そんな、受入農家さんのひとつ古屋農場を訪ねた。

実践マニュアル作成にむけて
 ところで、今回の取材は何かというと、本事業では地域や近隣町村へのフィードバックと、教育ファームの普及ということが本事業の目的のひとつでもあるので、新たに受入てみたい農家さんに対する受入方法や学校の先生などが子どもたちに教えたりする手引書のようなマニュアルを作成するねらいもある。今回のモデル実証で、あんなこと、こんなこと、こんな工夫をしている、こうやったら子ども達が感動した・失敗した・・・などなどをどんどん活動の中で取り入れながら、実践のヒント・ポイント(勘どころ)をおさえていこうと、協力団体さんには大胆な仕掛けを期待しながら活動を進めていってもらっている。
教育ファーム事業取組取材その1(旭川市古屋農場)_a0064927_22512583.jpg
(写真:マニュアル作成取材担当の木村さん(左)と、古屋農場の古屋良子さん。)
 
田んぼからのメッセージ 
 古屋農場では、「お米+α」の複合経営をしており、お米のほかにピーマンやイチゴ、トマト、ダイコンなど系統出しや直売など、宅配などをしている。北海道といえば、じゃがいもやカボチャ、メロンなどの農産物のイメージが大きいが、北海道は日本一のお米の産地で、とくにこの旭川周辺はお米どころなのだ。体験活動もお米づくりの活動が多い。とくに古屋農場では、8年前よりお米からのメッセージとして、「田んぼ文字」づくりを行なっている。
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(写真:田んぼ文字「かぞくみんなであったかごはん」と黒米で書いた。遠くに見えるのは北海道最高峰の旭岳・大雪山連峰) 

 今年は、農業体験のサポートにきている教育大生が考えたコトバを田んぼからのメッセージとした(田んぼからのメッセージについての詳細は雑誌「食農教育No55号(農文協刊)」参照。オイラが執筆してます)。黄色の部分は北海道のブランド品種「ほしのゆめ」。「こうすることで、田植え体験はもちろん、自分の植えた田んぼがど~なっているかな、ってリピートして見にきてくれるきっかけになります」という。

畑地帯から嫁にきたのでお米に興味
 実は古屋さん。農家出身ではあるものの、畑地帯生まれ。お米の栽培はお嫁にきた当時は分からなかったという。「それもあってなのか、お米にたいへん興味があって、いろんな稲を裏庭の小さな田んぼでつくっています」といい案内されたのは、10数品種の稲が植わっている見本田。黒米などの古代米から、北海道の稲作栽培の普及の元祖ともなった赤毛、黒毛の稲、そのほかきらら397やななつぼしなど北海道で主に栽培されている現在の品種など。
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(写真:見本田のなかのひとつ「世界一小さな稲」。上川試験場で突然変異でできた品種。背丈は20cmほど。写真では分かりずらいが、立派に実をつけ頭をたれている)

 さらに、のどかな田園を流れている用水路の水。「『この水は田んぼなどに勝手に入れられないのよ』って話すと『え、水にも利用権利があるんですか』って参加者のおかあさん方なんかはビックリするの。わたしもはじめはそうだったけどね(笑)」と。「水利組合という農村部特有の決まりがあって、のどかな風景と思ってみている田園風景も、いろんな決まりごとがあってこういう自然豊かな風景をつくっているのよ」と説明するという。

わら細工「工房稲わら」で農村の暮らしも発信
 ところで、この黒米とか赤米とか、品種によってワラの固さが違う。こんなにいろんな品種をつくっているのも、品種の学習に使うのはもちろん、お米に興味を持ってしまった良子さんは、それを活用してワラ細工を行なっている。近くの農家のお母さん方と「稲わら工房」というグループもつくって、お米は捨てるところがないということも知ってもらうことと、農村の暮らしの文化を知ってもらうために、草履やスダレづくりなども体験のひとつに組み入れている。
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(写真:ワラ細工の一部。スダレにワラの長靴。冬にはワラ細工体験などの受け入れも行なっている)

 産業としての農業だけではなく、暮らしの中の農業も体験してもらいながら、「農」をいろんな角度から子ども達に考えてもらっている古屋農場でした。 

 このあと、子ども農業体験塾のほかの受け入れ農家の西島農場、吉岡農場にも取材に行く。ちょっと、長文になりすぎたので、その模様は次回、「その2」で書き込みます。「教育ファーム事業レポート」でした。

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by agtec | 2008-09-05 23:50 | ●教育ファーム事業